ラザレフの王シャウザーとの戦いが終わり平穏な日々が続き、白ガラスクレイバーは退屈していた。
「もう自由にしていい。今までありがとうな」
レウリーにそう言われて、困っている。
自由にするってどうすればイイ?と、悩んでいる。
レウリーを王と思い一生懸命出来る事を頑張ってきたが、何の命令もされない今、毎日が退屈で仕方ない。
山の集落では毎日餌も用意されるし、何不自由無い。
だが、それが一番の不自由でもある。
やる事が何も無いからだ。
クレイバーが空に舞った。
「レウリー、今度あの湖に魚を捕りに行かないか?網もあるし、馬もある」
ハリドに言われてレウリーが笑った。
「たまには魚もイイな。馬で行くか?ドラゴンは目立つからな」
「私も行く」
ディアマンディが空色の瞳を輝かせた。
ヴァルゴウルに戻ったジョウリーは父ラウリーの道場で剣を指南している。
世界を救った男として、世界中の剣士達やヴァルゴウルの民に崇められている。
そんなジョウリーには、一つの疑問がある。
(剣があるから争いが起こる。なのに剣を指南し続けてイイのか)
兄レウリーの事はもう許している。
誰かを憎む気持ちも無い。
だが、兄レウリーはヴァルゴウルよりも山の集落でのケモノビト達との暮らしが気に入っているとヴァルゴウルへは一歩も踏み入れていない。
「皆、俺は少し外へ出る。各自鍛錬を続けていてくれ」
ラザレフ城でシャウザー王の側近だったケイズが地下室の床下を掘り、
怪しげな壺を見つけた。
(噂は本当だった。シャウザー様が居た頃は勝手な事は出来なかったが、ここの地下に暗黒魔道衆の一匹が封印されていると聞いていた。この壺がそうに違いない)
ケイズがニタリと薄汚い笑みを浮かべた。
「ふふふ、シャウザー様の無念を晴らしてやる」
少し考えた。
世界が壊れるのを目にする前に、真っ先に自分が殺されてはたまらない。
(さて、どうしたものか)