アリデラードを離れて7回、夜が流れた。
海を越えて貿易国ツェストルバンタにジョウリーが到着すると、
馬に跨る長い黒髪を後ろに束ねる見知らぬ男が眼の前に現れ、馬から降りた。
「その背中に吊るす長剣、ラウリー・ウェイブランドの息子か? 」
(コイツがシャウザー? )
同じように馬から降りたジョウリーが息を吐く。
「ふうううううううううう」
体が震える。
頭の中で自身に言い聞かせた。
(大丈夫。俺は鍛えてきた。父さんの聖剣ゾーグも手にしている。俺は強い。俺は負けない)
「最強と呼ばれる男は誰だ? 」
シャウザーが妖刀スナイキルを横に水平に降った。
その瞬間ジョウリーも聖剣ゾーグを握ろうとした。
だが、ゾーグは何の反応もしない。
空を切り裂く刃がジョウリーを襲う。
キィーンという激しい金属音が鳴った。
「馬鹿野郎!慢心したか?その剣はおごる者には抜かれないんだぞ」
眼の前にレウリーが現れた。
「レウリー」
ジョウリーが目を丸くして驚いた。
その時、上空の白いドラゴンがディアマンディーに言った。
「やっとレウリー殿を見つけました」
「急いで止めないと」
ディアマンディーが叫んだが、もう止める事は不可能。
ジョウリーは目の前に現れたレウリーに怒りを隠せない。
「レウリー、貴様のせいで父さんは自害したんだぞ」
レウリーが悲しい顔をしながらつぶやいた。
「その話は知っている。だが、今は目の前のコイツを倒すのが先だ。それくらい解るだろ? 今コイツを片付けないと世界が壊される」
シャウザー高笑いした。
「今日は良い日になるな?剣神と呼ばれた男の息子が二人共現れた。まとめて殺せば、世界最強と呼ばれるのは世界の王シャウザーだあっ」
大声で叫んだ瞬間、シャウザーが斬りかかった。
「邪魔だ。どけっ」
レウリーがジョウリーを蹴飛ばしてシャウザーの剣から守った。
(奴を斬れる距離まで近づかないと不利だな)
「大丈夫だ。お前なら出来る」
無剣ガルムがレウリーの脳内に語る。
「簡単に言うなよ」
言いながらレウリーがニタリと笑って、徐々に距離を詰めていく。
子供が大人と喧嘩をすると、どんなに必死に殴ろうとしても拳が空を切る。
そして、焦る。どうやっても勝てないのか?と。
それと似た感覚がシャウザーを焦らせた。
(何故だ?何故?我が剣スナイキルで斬り殺せない)
レウリーが吠えた。
「お前の剣は見えるんだよおっ」