Justice of sword 剣の正義

魔法の剣にまつわるオリジナルファンタジーストーリーです。

第五章 光の魔法使い#7

 武の大国ラザレフで、西の国ビネタを陥落させた事を喜ぶシャウザー王が過去に想いを馳せた。妖剣スナイキルを手に入れた後、ラザレフの兵士全てを斬り殺し、次に王を斬り殺し、王座を手に居れた。それでも、剣神ラウリーが生きていた頃は、同じ男が造った魔法の剣を持つ男と剣を交える事を躊躇していた。
 だが、現在は世界の国々を制圧し、世界の王の座を手に入れようとしている。不安要素が無いわけでは無い。剣神ラウリーが持っていた聖剣ゾーグを息子のジョウリーが持っている事と、光の魔法使いトレルブが他の誰かに魔法の剣を与えてはいないか?という事。ラザレフの王シャウザーは、暗闇の中で酒を煽った。

「そうか、トレルブも探して処分すべきだな。奴にこれ以上魔法の剣を造らせるわけにはいかない。奴にも懸賞金をかけよう」
 シャウザーは、ツスグスが操る黒鳩に伝令を命じた。

 

 貿易国ツェストルバンタに到着したジョウリー、ルマーロ親子、光の魔法使いトレルブは、荒れ果てた街並みを見渡して愕然としていた。地を埋め尽くす剣士達の死体の山と、吐き気のする死臭にむせた。
「こ、これは一体」
 薬草研究家のルマーロが呟くと、光の魔法使いトレルブがまだ息のある剣士を見つけて、傷を癒す魔法を使った。
「い、急いで逃げた方がいい。ラザレフの兵士達に殺されるぞ」
「ラザレフの兵士達に? 」
 ジョウリーが険しい顔で呟いた。すると、建物の陰から漆黒の兵士達がゾロゾロと姿を現した。
「ほう、まだ剣を持つ男がいたか」
 言うと同時に、漆黒の兵士達がジョウリーに襲いかかった。ジョウリーは聖剣ゾーグを手に取り、漆黒の兵士達の剣を次々に切り裂いた。一人の兵士の眼前に剣を突きつけると、父ラウリーと同じ言葉を使う。
「はい一度死んだ。二度も死にたいか」
 だが、兵士達は怯まない。
「我らラザレフの兵士は死ぬ事など恐れない。シャウザー様の命の為、死んでも世界を手に入れる」
 シャウザーという名前にトレルブが反応する。
「シャウザーだと?奴が武の大国ラザレフの王になったのか」
 剣を切り裂かれて尚、襲い来る兵士達を前にたじろいでいると、聖剣ゾーグがジョウリーの脳に直接怒鳴った。
「構わん斬れ! 」
 ジョウリーは、それでも戸惑った。
「悪い事は言わない逃げた方がいい。こいつらは本当に死を恐れないんだ。斬られても斬られても、襲いかかって来るんだ」
 トレルブに救われた剣士が叫んだ。
「仕方がないようだ。斬るしかない」
 光の魔法使いトレルブの声で、ジョウリーは意を決した。次々と襲い来るラザレフの兵士達を斬り殺した。
「生まれて初めて人を斬った」
 悲し気に呟く。
「これは恐らく、私の陽魔術とは対局の陰魔術。シャウザー一人の仕業ではない」
 光の魔法使いトレルブが呟いた。
「アリデ・ラードは、どうなっているのか」
 震えるルマーロを見つめて、ジョウリーが言った。
「俺も一度、アリデ・ラードに同行する」