Justice of sword 剣の正義

魔法の剣にまつわるオリジナルファンタジーストーリーです。

第五章 光の魔法使い#8

 ヴァルゴウルへ向かう山の一本道では、レウリー率いる山の獣人達が剣を握り、漆黒の兵士達を待ち構えている。レウリーが先頭に立ち、ディアマンディには、隠れて見ているように命令した。
「邪悪な魂を持つ者達が 近づいて来るぞ。我を使え」
 レウリーの脳に、見えない剣ガルムが言う。
「ほうほう、剣を持つ者達がいるぞ」
 漆黒の兵士の一人が呟いた。
「シャウザー様の命により、剣を持つ者全てを斬り殺す」
 レウリーが持つ柄に光の刃が現れる。
「皆、下がってろおっ」
 叫ぶと同時にレウリーが駆け出した。襲い来る兵士達の剣を次々に切り裂いた。それでも漆黒の兵士達は襲いかかる。
「邪悪な魂を切り裂け」
 見えない剣ガルムに言われるままに漆黒の兵士達を斬り殺した。筈だった。だが、誰一人死なない。
「何だ?どういう事だガルム」
 レウリーが呟くと斬られた漆黒の兵士達の色が抜けて、肌に赤みが増していく。
「我は人は斬らない。悪しき魂のみを斬る」
 斬られた兵士達は気絶して倒れ込んだ。
「そうか、本当に人は斬れないのか?良かった」
 レウリーは安堵のため息をついた。
「このまま寝かせておけ。クレイバーにしばらく様子を見させる。目覚めた後、まだ良からぬ動きをするようなら、その時は真剣で斬り殺す。そうならない事を願うよ」
 黙って見ていた獣人達、皆がホッと息を吐いた。

 ラザレフの漆黒の兵士達は、大陸東の国モルガーも攻めているが、モルガーの兵士達の長槍に苦戦を強いられている。モルガーの長槍を持つ兵士達は、一人を突き刺すと長槍を引き抜き後ろの兵士達と持ち場を入れ変えた。それを何度も繰り返し、一人一殺を続けた。そして、遂には漆黒の兵士達を全て闇に葬った。
 モルガーの国王が大声で叫ぶ。
「隣国に伝書鳩を飛ばせ!同盟軍を作るのだ」

 モルガーの隣国スパンクでは、城壁の上で策士率いる兵士達がラザレフの漆黒の兵士達を待ち構えている。地響きを鳴らせ近づいてくる漆黒の兵士達を眼にして策士が叫んだ。
「ラザレフの兵士達が来たぞ!構えろおっ」
 スパンクの城門前まで到着した漆黒の兵士達の一人が叫ぶ。
「城門を燃やせっ」
 ラザレフの漆黒の兵士達がスパンクの城門に火を放とうとした時、策士が合図を送った。
「今だ!岩を叩きつけろ」
 高く聳え立つ城壁の上から重く固い岩石が次々に叩きつけられた。兵士達は剣を振るう間もなく打殺されていく。それでも死を恐れない兵士達だったが、結果はスパンク国の圧勝だった。その後に隣国モルガーから伝書鳩が飛来した。スパンクの策士は迷う事無く同盟軍を作り、ラザレフと戦う事を決めた。