隣国ルケッテにたどり着いたジョウリーは、争いに巻き込まれて困惑していた。
「おいおい、どうしたんだよ?この国の名前ルケッテだろ?仲よくしようって意味の言葉だよなあ?どうしたんだよ一体」
「どうもこうもない!行き場のない流れ者が、次々現れるから追い出しているんだよ」
ジョウリーが激高して叫んだ。
「だからって、これじゃあまるで戦争じゃないか」
争いに巻き込まれたジョウリーの体に剣のかすり傷が増える。
ジョウリーの手に聖剣ゾーグが握られた。片っ端から剣を切り裂こうとしたその時、空に赤い翼竜と背中に赤い翼を持つ獣人達が現れた。
争いの中心部に一人の男が舞い降りた。
(あれは、レウリー?何故ドラゴンに乗っていた)
争いの中心部から空を舞う獣人達に次々と、剣が投げられる。
「ディアマンディ!ハリド!みんな!剣はいただいた。帰るぞ」
叫ぶと、レウリーが赤い翼竜の背に飛び乗り、空の彼方に消えた。あっという間の出来事だった。争っていた男達は、呆気に取られている。何が何だか解らない。全ての者が剣を奪われ戦意喪失だ。
ジョウリーは、拳を強く固めて怒りに震えている。
「盗賊?どこまでウェイブランド家の名を汚す気なんだレウリー」
山の集落に戻ったレウリー達は歓喜の声をあげていた。
「レウリー、争いを止める為に剣を奪うなんて、よく考えたな」
言われたレウリーが得意気に笑った。
「こんな山賊なら悪くないだろ?ハリド、一番の活躍をしてくれた鳥達に、何か食い物を食わせてくれ」
「おーい、何か食い物ないかあ」
ハリドが嬉しそうに女達の元へと駆け出す。ディアマンディも嬉しそうに笑っている。
「私達、もしかして正義の山賊団かな」
「泥棒は泥棒だ。良い泥棒なんて無い」
レウリーが難しい顔をした。
夜になり、昼間の興奮が冷めない山の民達は、宴を開いている。
「山賊やって楽しいと思ったのは初めてだよ」
ハリドが興奮している。
「もうやらないよ」
苦笑いしながらレウリーが酒を喉に流した。