レウリーを探すジョウリーと、陽魔術を使う男を探すルマーロ親子の三人は、アリデ・ラード、次にルケッテを越えた。山脈を横目に海沿いに進み、未知の国が無いか?探し歩いている。
「正直言って、ドラゴンに乗って空を飛べるレウリーを捕まえる事が不可能に思えてきた」
ジョウリーがこぼすのを聞いて、ルマーロも愚痴を吐いた。
「私も居るかどうかも解らない者を探すのが辛くなっています」
と、その時、ウェッピィが大声を出した。
「パパ!あそこに大勢の人が居るよ」
言われて、ジョウリーとルマーロの二人も声をあげた。見ると、連なる山脈の壁に、いくつも開いた穴の前に立つ人々の姿がある。
「向こうへ行ってみよう」
ジョウリーが言った瞬間、三人の脳内に直接声が聞こえた。
「見かけない顔だな。どこから来た」
問われて、ルマーロが即答した。
「アリデ・ラード、ルケッテと、旅歩いてここへ来ました」
「旅人か。良くもここまで渡り歩いてきたものだ。何かを探して旅をしているのか」
ルマーロが即答した。
「陽魔術を使う男を探す為に、旅をしています。何か知っている事があれば何でもいいので、教えていただけませんか」
脳内の声が反応した。
「陽魔術、奇跡の魔術師。光の魔法使いと呼ばれる者の事か」
三人が目を輝かせた。
「その方は存在するのですか? 」
しばらくして、小さな声が聞こえた。
「客人として向かえる。黙ってここへ来い」
一時間ほど歩いただろうか?山脈の壁穴にある集落に着いた。脳内で聞こえた声で一人の男が言葉を発した。
「トレルブを探しているらしい。話を聞いてやれ」
男の言葉で壁穴から住民達がゾロゾロと現れた。
「話を聞かせてくれ」
最も年老いていると思われる老人が問う。ルマーロは、世界各地で起きた疫病の話やアリデ・ラードの王と王妃が疫病で目覚めぬ病で眠りについている事など、事細かく説明をした。すると、老人がニコリと微笑んだ。
「旅の方、貴方達が探している男の名はトレルブと言います」
老人は遠くを眺め、寂しそうな顔をした。
「光の魔法使いと呼ばれるトレルブは、特別な力を持っている事が邪悪な者に知られ、妻と娘を失った。その後、自分が居ると周りに迷惑をかけると思って、ここを離れました」
「それでは、今どこに」
ルマーロが問う。
「おそらく、南東にある離れ小島に居ると思います」
ジョウリーも問いかけた。
「最近、白いドラゴンを見かけていませんか」
問われた老人は、ジョウリーが背中に吊るす聖剣ゾーグに目を向けて、訝しむ目で問いかけた
「その背中に吊るしても地を引きずる長剣を見せてはくれまいか」
言われて、聖剣ゾーグを差し出すと老人が目を丸くした。
「こ、これは、トレルブが造った聖剣ゾーグ」
「そうなんですか?これは父の形見の剣です。これを造ったと」
老人が語りだした。
「昔、トレルブは、旅の途中でここへ訪れた君の父さんに剣をを教わった。そのお礼にと、その剣を造った。その後に、噂を聞いた男がトレルブに剣を造って欲しいと言い、トレルブはその男に剣を造った。その直後、切れ味を試したいと言って周りに居た者達を斬り殺し、トレルブの妻も斬り殺した。『満足な切れ味だ』と言い残し、男は消えた。それを見ていたトレルブの娘は、あまりに残酷な出来事を見てしまったせいだろう。言葉も無く、無表情で姿を消した。トレルブは、それからしばらく放心状態だったが、もう二度と剣は造らないと言い残して出ていったよ」
「そんな酷い事が?それでトレルブという方が消えた」
老人は、寂しそうな顔で頷いた。
「白いドラゴンも、貴方達と関係がおありで?その白いドラゴンも、トレルブが居ると思われる南西の方角へ飛んでいったよ」
老人の話を聞いたジョウリー、ルマーロ親子、三人は、同じ場所を目指した。