Justice of sword 剣の正義

魔法の剣にまつわるオリジナルファンタジーストーリーです。

第一章 終りの始まり#1

 四方を高い山々に囲まれる北の国、ヴァルゴウルに春が訪れた。緑が豊かに育ち、花々が微笑んでくれているのがその証。子供達が遊んでいる野原に、木刀を振るう、若い二人の男がいる。

 薄茶色の長髪の男が、隣で木刀を振るう、同じ茶色で短髪の男に話しかけた。
「ジョウリー。父さんに教わって、少しは強くなったか?たまには相手にしてやるよ」
 言われたジョウリーが険しい顔で睨んだ。
「レウリー。いくら兄さんだからといっても、容赦はしないけど、大丈夫ですか? 」
 レウリーが大きな声で笑った。
「面白い事を言う。俺が負けるとでも? 」
 顔を真っ赤にしてレウリーに木刀で斬りかかった直後、ジョウリーの数時間が奪われた。
 ジョウリーを倒したレウリーが、追いかけっこをして遊ぶ子共達を眺めた。過ぎ去りし日々を思う。
「昔はあんな風にじゃれ合ったが、今では遊び相手にもならない」
 レウリーが、茶色の瞳を曇らせて寂しげに呟いた。
「こんな弱い奴を鍛えて、強い俺様を放ったらかし? 」
 忌々し気に空を見上げ、言葉を吐き捨てた。その後、レウリーは黙って野原から立ち去った。